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 『コミュニティバス』。まちづくりに関心をお持ちの方はよく耳にする言葉だと思います。ですが、コミュニティバスを横浜ではなかなか見掛けることがありません。何故でしょうか。

コミュニティバスは人口の少ない都市のみを走っているんじゃないのか、あるいは横浜には行政が赤字補填するようなバスはないのだ、など、様々な推測をされる方もおられるかもしれません。実のところお隣の大和市では走っていますし、多くの人口を擁する東京都武蔵野市の「ムーバス」がそもそも先鞭をつけていますから、人口は関係なさそうです。

写真:六浦駅付近、丘陵地の住宅団地を走る京浜急行バス(横浜市地域交通サポート事業によるバス路線)

コミュニティバスとは、法的に明確な定義はありません。横浜市では道路行政を所管する道路局の位置づけとして次のようにされています。

コミュニティバスは、明確な定義はありませんが、一般的な路線バスで採算性が確保できない路線等において、自治体がバス事業者に運行を委託して運行経費の赤字分を補填するバスが一般的にコミュニティバスと呼ばれています。

道路局ホームページ内文書より抜粋

 横浜市は令和3年10月現在で人口377万人を擁する日本最大の基礎自治体であり、これまで如何にこの市民力を活かし、協働できるかという前提で市政運営が行われてきました。

 この市民協働の方針により、丘陵地が多く移動手段として路線バスが必要だとされる地域に対し、住民間での協議を前提として行政がノウハウを伝授し、バス事業者の協力を得ながら試験運行を行い、採算ラインに繋がる形になれば晴れて本格運行されるという「横浜市地域交通サポート事業」が注目を浴びてきました。地元住民からの要望を経て敷設されたバス路線であっても、運行に係る赤字分を税金によって補填するとされるため、あえて「コミュニティバス」という呼称は用いられていないのです。

 ただし、市内で全く財政支援の必要な路線が無いのかというと例外もあります。徒歩15分以内の箇所に鉄道駅が無い地区など規定に基づき市民の日常生活の利便性を確保するためと認定されたバス路線に対して補助金を交付する「横浜市生活交通バス」制度を用い、道路局によって維持されている路線も存在します。さらには、市営バスの運行を行っている交通局が地域住民の生活支援を目的とした「ふれあいバス」を住民の要望に応じて走らせる路線や、住民同士の助け合いで車両や運転手を用意し、定期的に運行する会員制のボランティアバス(菊名おでかけバス)などもあります。このように、さまざまな背景や仕組みで支えられている多様なバス路線があることも横浜ならではの特徴といえます。

写真:本格運行に至るも、最終的には事業者の撤退に繋がった路線もあります。
(二俣川駅を循環する『四季めぐり号』のバス停)

冒頭で、横浜でコミュニティバスをなかなか見掛けることが無いと述べましたが、旭区の若葉台団地では「若葉台コミュニティバス」(わかば号)という名称で団地内循環バスが運行されています。これは地域の市民団体や財団法人の皆さんによる自主的な住民活動の一環で運行されているもので、横浜市が財政支援を行っているものではありません。単一の団地内に1万6千人も住民がいるコミュニティの中で、地域内(コミュニティ)を巡回するバスということでコミュニティバスという名称を用いられたと解釈して良いでしょう。

誰もが移動しやすいまちという観点で地域を考える上で、皆さんも身近に走るバス路線の背景や歴史を調べてみると面白いかもしれません。一人でも多くの地域の方を巻きこんで、バス路線への関心を高めていくことが持続可能なまちづくり活動への一歩となるのではないでしょうか。

参考リンク

コミュニティバスに関するもの 横浜市
横浜若葉台団地 : 一般財団法人 若葉台まちづくりセンター
横浜市地域交通サポート事業 横浜市